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最近読んだ本 読書memo 006

朽ちていった命―被曝治療83日間の記録
NHK「東海村臨界事故」取材班
新潮社
売り上げランキング: 3467
久しぶりの一気読み。といっても薄い文庫本なのであっという間でしたが。途中で止められるような内容ではありませんでした。1999年の東海村臨海事については、事故直後の避難要請や避難勧告をはじめとした対応、JCOによる作業工程管理の杜撰さ、臨界事故の科学的解説、そして特に多量の放射線を浴びた作業員3人のうち二人が亡くなったこと、等が報じられていたのを記憶しています。この本は被曝して亡くなられた作業員の一人の83日間の治療記録。まさに身体が内部から朽ちていくーその様子のみが綴られた記録。こういうドキュメンタリーは情緒性に偏り無駄な贅肉を纏ってしまい肝心な部分が見えなくなることが多いのですが、この本は放射線被曝によって人間がどうなっていくかを短い本でありながらしっかりと伝えている。優れたドキュメンタリーはフォーカスを徹底的に絞り込みながらもフォーカス外をも想像させる力を持つ。この本もそんな力を持っています。

「核」論―鉄腕アトムと原発事故のあいだ(武田徹/中公文庫)
「核」つながりで。こちらは(できる限り)一つのポジションに身を置く事なく多視点を描く事で「核」の社会化にフォーカスしていく。高木仁三郎のナイーブさについての言及等も僕自身は持っていなかった視点でした。東海村臨界事故についても一章割いています。

インテリジェンス 武器なき戦争(手嶋 龍一、佐藤 優/幻冬舎新書)
読み始めた時にも一度触れましたが、やっぱり面白かった。言い切れない部分を含ませつつの話し(もちろん核心は滲ますことさえできないのでしょうが)の展開がより想像をかき立てる。お互い認め合いながらも見解の相違はそれぞれプロとして明確に対峙する部分もスリリング。内閣官房副長官補の谷内正太郎にも興味がわきました。

インフォーマル(セシル・バルモンド/TOTO出版)
建築界隈で構造家セシル・バルモンドが異常に持ち上げられている状況に違和感を持っていたところでこれを読んでみましたが、その違和感は取り除かれることはありませんでした。彼が優れた構造エンジニアであることに疑いはありませんが、あくまでも建築=造形創作のフレームの中での新しい手法としか感じられません。

前田建設ファンタジー営業部(前田建設工業/幻冬舎)
子供の頃マジンガーZにしてもウルトラマンにしてもガッチャマンにしても基地が大好きでした。ゼネコンがマジンガーZ地下格納庫を実際に作るーという企画が本になったものですが、この本の意義は実際に見積りと工期まで出されているということです。せっかく面白いことを始めた前田建設でしたがこの後談合事件への関与が明るみに出てしまいましたとさ。

エロマンガ・スタディーズ―「快楽装置」としての漫画入門(永山薫/イーストプレス)
エロの敵 今、アダルトメディアに起こりつつあることに続くカバーがないと読みにくい本シリーズ。正にそれに現れているような「エロの壁」がエロマンガの特性の一部を形成しているという指摘は鋭い。マンガの歴史には現れないエロマンガの歴史は深く広く面白い。

20世紀少年 22―本格科学冒険漫画 (22)(浦沢直樹/小学館コミック)
大好きなマンガなんですよ。全巻揃えています。しかし、ここ数巻は拡散と収束のバランスがどうも気持ち悪いです。安定した結末なんて求めていませんが拡散と収束が引き起こすダイナミックさを期待します。

PLUTO 4―鉄腕アトム「地上最大のロボット」より (4)
浦沢 直樹 手塚 治虫
小学館
売り上げランキング: 1
20世紀少年に比べてこれはまだまだ期待が高まるダイナミズムを持っています。実際どうだったかは分かりませんが、手塚治虫が考えたであると思われることにより深く切り込んでいる。工学的な側面よりもむしろ認知科学や心脳問題、意識の科学について。各巻の装丁・カバーも秀逸。

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