ミュンヘン・オリンピックのヴィジュアルデザインで知られるオトル・アイヒャーの特集。その中で『デザインとしての世界』の部分訳が掲載されています。
「デザインは人を自律的にし、デザインする人々は危険な存在となる。支配を行使する権威にとって、かれらは危険なのだ。」「デザインは心の活動の生み出すもっとも複雑な構造物である。一個のデザインは分析的であると同時に総合的であり、特殊的でありかつ一般的であり、また具象物でありながら原理的対象なのである。」「デザインが生まれるのは、理論と実践が衝突する地点である。」
勇気づけられます。これはぜひ全訳が読みたい。デザインは
原著のままで。(独語版の方がベター)
もう一つの特集「海外雑誌カルチャー」も合わせて久々に秀逸。
生物と無生物のあいだ(福岡伸一/講談社現代新書)
最近読んだ生物学本ではベスト級。シュレーディンガーの生命とは何かからシェーンハイマーの実験と考察を経て示される「生命とは動的平衡にある流れである」という生命の再定義は現時点で最も納得できる。「生命とは何か」の分かりやすい解説にもなっていて嬉しい。著者の研究のプロセスとしてまた次もぜひ読みたいです。
遺伝子・脳・言語(堀田凱樹、酒井邦嘉/中公新書)
サイエンス・カフェというフォーマットが生かされた本。「手話の脳科学」は特に興味深かった。
メディアは透明になるべきか(J・D・ボルター+D・グロマラ/NTT出版)
ライティング スペースが面白かったので読んだのですが、これはSIGGRAPHのちょっと過去形ーそのままーであまり楽しめず。
「情報」を学び直す(石井健一郎/NTT出版)
「情報」論から「コミュニケーション」論へ。まだまだ「コミュニケーション」論は遠い気がします。
抵抗の場へ―あらゆる境界を越えるために(マサオ・ミヨシ、吉本光宏/洛北出版)
これはインタビューというフォーマットから生まれた強度。「我々」ってつい自分も使いがちですが、怖い言葉です。境界を越えられなくても境界に触れていればいいのだと思う。
大久保町の決闘(田中哲弥/早川文庫JA)
ついに復刊しました。長編デビュー作だけあってバカ度は最上級。でも、Self-Reference ENGINEを先に読んでしまったので刺激が少し足りなかった...。
蹴る群れ(木村元彦/講談社)
木村元彦の本を読むと、ピクシーのようなスターも戦時下のイラク代表チームもアルバニア出身の元「横浜FC」の助っ人も、皆愛しく感じます。そしてサッカーがもっともっと愛しくなる。カフカもアインシュタインも「DFCプラハ」というクラブのサポーターだったそうです。知らなかった!
池内 恵 他 選書出版部
講談社 (2007/05/11)
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ボリューム満点の第3号。池内恵の「ジハードの思想史」と連載の「実在論論争ー科学に何ができるのか」(伊勢田哲治vs.戸田山和久の往復メール)が面白い。後者の絡みは容赦なく進みそうでますます期待大です。