空間の際
建築の際という東京大学大学院情報学環・学際情報学府主催のトークイベントへ行ってきました。今回が最終の第5回だったのですが僕はこれが初めてでした。「空間の際」というテーマで、ゲストは建築家の原広司氏、数学者の松本幸夫氏、実世界指向インタフェース研究者の暦本純一氏のお三方。
物理的空間、社会的空間、情報的空間まではある程度重ねて考えることができるのですが、そこに数学的空間を持ってくるとアナロジーの罠に陥ってしまうか(松本氏の言うように)外界を全く必要としない数学的空間内=数学世界に閉じこもるしかなくなってしまう。なのですが、空間を考える人間にとって特に次元とか多様体といったトポロジーの世界は魅惑的で、つい誘われてしまうんですね。僕もかつて松本氏の著作よりも少し易しい『トポロジー:柔らかい幾何学』等を読んだりしていましたが、数学世界は遥かかなたでした。
原広司さんがこれまでも取り組んできて、この日のトークの最中でもしきりに考え続けていた「(位相)幾何学によって経験を記述できるようになれば建築や都市は全く描き換えられる」ということに少しでも可能性が生まれるとすれば、数学世界から外界へも軽やかに出てくることができる数学者が登場した時でしょう。それにしても「建築(空間?)は落ちるんだよ」と言いながら執拗に考え続ける原さんは素敵です。僕も京都駅の空間は大好きで、池上高志さんとやろうとしているプロジェクトを京都駅でやれたらいいなあと勝手に妄想したりしています。その件も含めてぜひ原さんともお話してみたい。
暦本さんはもう東京大学大学院情報学環がメインのようですね。今日は松本さんの数学世界に覆われてしまったのでhuman-computer-realworld系のお話はあまり聞けませんでしたが、暦本さんと原さんのガチのトークとかもまた別であれば面白そうだなあ。
終了後、先日の「建築雑誌」のインタビューでお会いしたぽむ企画の平塚桂さんに出会い、同じく「建築雑誌」の編集委員をされている建築史家の倉方俊輔さんを紹介していただきました。倉方さんは「非線形・複雑系の科学とこれからの建築・都市」という特集で池上さんにインタビューをされています。そんな微細なネットワークも発現した夜でした。
帰りに次元つながりでこれを購入。